和田経営労務研究所
特定社会保険労務士
和 田 栄
http://www.jinsouken.jp/

デンタルリサーチ社事件(東京地裁 H22.9.7判決)
(労働経済判例速報 通算2084号)


④割増単価は正しいか
 →住宅手当も家族手当も割増単価の基礎から除外することはできない


これだけは、この事件特有の事案ですね。

よくあるのは、本来は割増単価の基礎に含めなければならない手当を含めず、基本給だけで割増単価を算出しているというケース。
もちろん、未払い残業代を計算するときは、これらの手当を含めて計算させられるので、思ったより金額が多くなったなんてことになります(-_-メ

しかし、法律で住宅手当や家族手当は割増単価から除外できることになっているので、これを含めなさいということは本来あり得ません。

では、なぜ除外が認められなかったのでしょうか?
実は、住宅手当や家族手当といいながら、実態は住宅とも家族とも関係がないと判断されてしまったのです。

オーマイゴット\(゜□゜)/

住宅手当や家族手当を割増単価の基礎から除外していいという趣旨は、これらが労働とは関係のない手当だからです。

大事なのは名称ではなく中身。
労働とは関係ないということが証明されなければならないのです(-""-;)

たとえば、住宅手当であれば家賃の金額に応じて手当額が決まるとか、家族手当であれば家族の続柄や人数に応じて手当額が決まるというようなものでなくてはなりません。
住宅や家族との因果関係がない限り、いくら名称が住宅手当や家族手当であっても除外することは認められないのです。

今回のケースはどうだったかというと、ちょっとイレギュラーな対応をしています。

当初、この社員の手当は住宅手当2万8000円、家族手当1万8000円、役職手当1万5000円、特別手当4万円、職務給2万2500円でした。
ところが、この社員は業績が芳しくない割に役職手当等が多すぎると他の社員から不満が出るようになりました。
かといって単純に下げるわけにもいきません。
仕方なく、役職手当、特別手当、職務給の分を住宅手当と家族手当に加算して、見かけ上役職手当等をなくしたようにしたのです。

これがまずかったY(>_<、)Y

こうなると明らかに住宅や家族との因果関係はありません。
因果関係がないのだから、割増単価の基礎から除外することはできない。
せめて、当初の住宅手当2万8000円、家族手当1万8000円分くらいは除外してくれてもよさそうですが、これらも含め全額について割増単価の基礎に含めなさいとなってしまったのです。

今回のケースは、やむを得ない事情もあり、少しかわいそうな気がします(´д`lll)
でも、こういうことってオーナー企業ではよくあることです。
社長が創業者だったりすると、たいてい明確なルールはなく社長自身がルールみたいなところがあります。
誰も文句を言えないので、勝手にその場かぎりの対応をしてしまうのです。

社長に悪気はなく、むしろ社員のためにしてあげたことなんでしょうが、結果として自分で自分の首を絞めることになってしまいました。

(次回につづく)