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仕事の遅延をなくす【ゴールからの問い掛け】
6月27日15時10分配信 ITmediaエンタープライズ


6月は第1四半期が終わる時期である。
4月に決めた計画はスケジュール通りに進んでいるだろうか。
スケジュールが思い通りに進まない時は、スケジュールを立てる際の認識や進ちょくの確認にひと工夫加えてみることをお勧めする。


例えば・・・
プロジェクトを担当する場合、多くのメンバーはプロジェクトがスケジュール通りに進むことを望んでいるだろう。
予定通りに進めばメンバーに余裕が生まれ、モチベーションも上がり、充実感が生まれる。

プロジェクトリーダーにとっても、チームをうまくコントロールしている証拠にもなり、周囲からの評価も上がるはずだ。認められれば気持ちもいい。


だが、現実はそう甘くはない。
予定通りにスケジュールが進行しないと、リーダーはメンバーにハッパをかけたくなる。

残業が毎日続くようになれば、メンバーは疲弊し、モチベーションが落ちてしまう。
そればかりか、困っている仲間がいても助けられなくなってしまうかもしれない。
複数のチームで担当するプロジェクトなら、1つのチームの遅れが開発の足並みを乱し、全体のスケジュールにも影響が及ぶ。
急いで間に合わそうとして品質が落ちたり、全体の遅れがコストに跳ね返ってきたりすることもある。
日々のプレッシャーやストレスに胃を痛めている人も少なくないだろう。


こうした問題を解決するマネジメントの手法はたくさんある。


例えば・・・
「PMBOK」(Project Management Body of Knowledge)と呼ぶフレームワークは、プロジェクトの目的や範囲、時間、コスト、品質、人的資源、コミュニケーション、リスクなどの知識を体系化したものだ。

これらの要素を加味したマネジメントを行うことは大切だ。
PMBOKをチームに導入すれば、チームにまとまりができ、スケジュールの遅延も起こらなくなるだろう……と多くのマネジャーは考える。


だが、ここでも想定通りに物事が進むとは限らない。
「PMP(Project Management Professional:PMBOKに準拠した国際的な認定制度)」の資格を持っている知人を知っているが、彼ら自身がプロジェクトの運営に悩んでいる。


プロジェクトの進行に必要な知識を体系的に身につけることは大切だが、いくら知識があっても、実際にチームを率いていくのはだ。

フレームワーク以上に大切なことは、メンバーと円滑にコミュニケーションを取ることなのである。
では、スケジュール通りに仕事を進めるためには、どのようなコミュニケーションが望まれるのだろうか。


◆仕事は遅れるものである◆

仕事にはトラブルがつきもので、一般的には予定通りに進まないものである。
避けられないトラブルを吸収できるようにするには、日程やスケジュールに余裕を持たせておく必要がある。
「それは仕事の前提で、そんな余裕があったら最初から余裕を取っている」と言いたい気持ちもよく分かるが、今一度余裕を確保することの重要性を確認しておこう。


こんな場面を想像してほしい。。。
あなたは空港に友人を迎えに行こうとしている。
普段なら、空港までは車で20分ほどの距離だ。
あなたは何分前に出発するだろうか。10分くらいの余裕をみて、30分前ぐらいに出発する人が多いはずだ。


では、あなたの会社にとって大切な顧客を迎えに行くとしたらどうだろう。
友人と同じ30分前に出発するだろうか。途中で渋滞に巻き込まれるかもしれない。友人ならば「遅れてごめんね」で済むが、顧客の場合はそうはいかない。大切な顧客なら1時間前、もっと早く出発するかもしれない。


この例で分かるように、時間に余裕を持つ(サバを読む)のは責任感の表れといえる。

だが、これが仕事になると、時間に余裕を持つのが悪いことのように思えてしまう。

だが、相手のことを考えた上で余裕を取るのは、悪いことではないという認識を持ってみよう。


◆余裕を持てばスケジュールが予定通りに進む……わけでもない◆

スケジュールに余裕を持っても、仕事が予定通りに進むとは限らない。
少年時代の夏休みの宿題を思い出してみよう。
「夏休みは1カ月もある。休みが終わる10日ぐらい前から手を付ければいい」と最初は思う(宿題をやっていないというと怒られるので、親には『毎日ちゃんとやっているよ』と言ってある)。
そして「そろそろやろう」と10日前に宿題をやり始めると、予想以上の分量であることに気付く。
夏休みの宿題なら笑い話で済むが、仕事でも似たようなことは起こっていないだろうか。


例えば、進ちょく確認のために、メンバーから週1回の報告をしてもらうと決めたとする。

メンバーは「予定通り10%まで進んでいます」と作業の進ちょくを報告する。
予定通りに進んでいると聞いたリーダーは「遅れは生じていないから大丈夫だ」と安心する。

だが、進ちょくを報告したメンバーの心の中の余裕には、上述した夏休みの宿題と似たようなものがあるのだ。


プロジェクトは、終盤にさしかかるにつれて徐々に遅れが生じてくるものだ。
最初は1週間ごとに確実に10%ずつ進んでいたプロジェクトは、後半になるほど進ちょくが悪くなる。
進ちょく率が90%くらいになると、遅々として進まなくなる。
完成が近づき、形が見えてくればくるほど「急に仕様が変更になった」など手戻りが発生し、起きて欲しくないタイミングで、なぜがトラブルも起きてしまう。


進ちょく上はあと10%のはずが、これまでに要した期間と同じくらいの期間が必要になることもよくある。
プロジェクトがいつ終わるのかさえよく分からず、プロジェクト終盤ではリカバリもままならない。
「いつも言ってるじゃないか。なぜ最初からきちんと段取りをしておかなかったんだ」――最後には、リーダーはこの言葉を繰り返してしまうのである。


◆「あと何日で終わる?」の効果◆

さて、リーダーの立場で進ちょくを確認する方法を考えてみたい。
通常、スケジュールを確認する際に用いられるのは「今、全体の何%進んでいるか?」という進ちょく率である。

だが、進ちょく率を確認していても、プロジェクトをスケジュール通りに間に合わせるのは意外と難しい。

一方、遅延が生じると知りたくなるのは「目標が達成できるまでに、あと何日で終わるか」ではないだろうか。
それならば、最初から「あと何日で終わるか」を確認してみてはいかがだろうか。


「どれぐらい終わった」と聞くことが「過去のスタート地点から現在をたどる方法」だとしたら、「あと何日で終わる」という質問は「未来のゴール地点から現在をたどる方法」だといえる。


例えば、10日間の作業があるとして、5日が経過していたとする。
当初の予定から見た進ちょく率は50%だ。これだけを確認すると問題がないように思える。

だが、実際には予定にはなかった作業が発生しているかもしれない。新たな作業が発生した場合、なかなか言いにくいものだ。


そこで進ちょく率ではなく、ゴールから数えてあと何日で終わるか、目標を達成するために必要な日数はあと何日か、を聞いてみる「あと7日かかりそうです」という報告があったら、完成が2日間遅れてしまうことになる。
至急対策を打たなければならない。遅れが出始めた早い段階から対策を取ることができる。


夏休みの宿題のように、未来が遠いほど余裕があるように思えてしまうが、「あと何日で終わる」というゴールからの問いかけは、常に仕事の終わりをイメージさせる。

その結果、「あと何が必要なのか」という仕事の抜けや漏れを意識するようになる。
スケジュールだけでなく、早い段階から新たな問題やリスクに気付くことにもつながってくる。


「サバを読む」「ゴールから考える」といった手法は、「TOC」(theory of constraints:制約条件の理論)と呼ぶ理論に基づいている。

年間計画など、長い期間が必要なプロジェクトはスケジュールが遅れてしまいがちである。
それを防ぐためには、常にゴールをイメージさせながら仕事を進めるようにする。
こうしたコミュニケーションが、マネジャーと現場の意識のズレをなくしていくのだ。


少しの工夫をすることで、仕事の成果が出せるようになることを祈っている。


【引用: ITmediaエンタープライズ 最終更新:6月27日15時10分】


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