厚生労働省の立ち入り調査で、労働基準法などに違反するとして05年に行政指導を受けたバス会社が全国で85社に上ることが分かった。規制緩和により新規参入が可能になった00年に比べて、4倍以上に増えた。大阪府吹田市で今月18日に発生した観光バス事故では、運転手の過労による居眠りが原因との見方が強まっているが、業界の競争激化による労働環境の悪化が背景にありそうだ。

 同省は毎年、内部告発や違反歴などを参考に、各地の労働基準監督署を通じてバス会社に立ち入り調査を実施。05年は調査した118社のうち85社が、労働基準法や労働安全衛生法などに違反していた。道路運送法改正で新規参入業者が増え始めた00年には20社、01年は25社、02年28社、03年72社、04年59社がそれぞれ行政指導を受けた。

 05年の主な違反内容は、労働時間(週40時間など)に関するものが56社、割増賃金関連が31社、休日関連が8社だった。また同省が自動車運転手の拘束時間などを定めた改善基準告示についても、70社が違反していた。内訳は、▽1日最大拘束時間(16時間)違反52社▽休息時間違反26社▽連続運転時間(4時間)違反15社−−などだった。

 同省労働基準局監督課は、行政指導を続けても改善が達成されない場合、検察庁に書類送検するという。同課は「調査にも限界があり、全バス会社の一部にしか目が届かないのが実情。労務管理の講習会など総合的な対策を進めたい」としている。