2012年 7月の記事一覧

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12年07月24日 13時12分12秒
Posted by: mizoe
 札幌市豊平区の 社会保険労務士・税理士 溝江 諭(みぞえさとし) です。
 
 2012年6月26日、衆議院本会議で消費税率引き上げ法案が民主、自民、公明などの賛成多数で可決されました。今後は参議院で審議されることになりますが、法律の成立は8月以降になる模様です。
 
 この法案は、2014年4月に税率を5%から8%へ、15年10月にさらに10%へと段階的に引き上げるというものですが、実施されると、①景気の悪化と②財政のさらなる悪化が懸念されます。
 
137-2.jpg
 
 今回は、景気の悪化について考えてみます。
 
 
 商品やサービスの価格が上がると基本的には需要が減少しますが、需要が増加する場合もあります。それは、その商品やサービスの価格がさらに上昇すると見込まれる場合です。そのため、今回の引き上げも2回に分けて段階的に行なうこととされました。
 
 この2段階引き上げ方式により、2015年9月までは一時的な需要の増加をもたらすものと思われますが、その分将来の需要を先取りすることになるため、2015年10月以後はさらに消費を冷やす結果となるでしょう。
 
 また、消費税の引き上げによる商品やサービスの価格上昇は、デフレ傾向を加速させることにつながりかねません。
 
 現在のデフレ傾向は、モノ余りの状況が生んだものです。すなわち、需要量が供給量を大きく下回っているため、商品やサービスの価格が低下するのです。さらに、生産者、販売者の生き残りを賭けた低価格競争がこれに追い打ちをかけています。
 
 そもそも我が国がこのようなモノ余りの状況となった最大の原因は労働力人口の減少と急速な少子高齢化のためです。
 
 日本の総人口は2010年(平成22年)1億2805万人をピークにその後減少局面に入ったようすが(注1)、本来旺盛な消費傾向を示す15歳以上の労働力人口でみると、それより10年早い2000年(平成12年)の6798万人をピークにその後は減少に転じ、2012年(平成24年)5月現在では6534万人とピーク時に比べ約4%の減少を示しています(注2)。これは少子化のためですが、注目すべき点は、総人口がそれほど変わらない状況にあって、高齢者や高齢者世帯は急激な増加傾向にあることです(注3)。高齢者の方は欲しいものが徐々に少なくなり、また食欲も落ちてくるとともに、旅行や外出等の機会も減少するため、全般的に消費意欲も減退していきます。そのため、モノ余りをさらに加速することになるのです。
 
 このようなデフレを打破するためには逆ピラミッド型の歪んだこの世代構成をピラミッド型に近い型にする必要があります。そのためには少子化を食い止める強力な政策が必要となるのですが、残念ながらこれまでの所、有効な対策がとられていません。
 
 また、少子高齢化による景気低迷の影響は、若年者層の失業者数の高止まりや1998年以後の給与所得者の可処分所得の減少にもつながっています(注4)(注5)。失業者の増加や可処分所得の減少は消費者に必要な物を必要な分しか購入しないという選択的な消費行動を誘引し、モノ余りの状況をさらに作り出していると言えます(注6)。
 
 このように厳しく、先の見えない経済状況の中で、政府は消費税を引き上げようとしているわけです。毎年の社会保険料引き上げや復興臨時増税による所得税や住民税の引き上げにより可処分所得が減少する給与所得者、年金額が物価スライドにより減少し、介護保険料も引き上げられ、医療費の自己負担分が増加傾向にある年金受給者などの消費者は限られた収入の中できわどいやりくりを迫られ、今以上に財布の紐を引き締めざるを得ないこととなります。一方、企業も売上が増えない中で社会保険料負担の増加と直接人件費の自然増に対処するため、さらなる固定費の削減に着手せざるを得ないことになるでしょう。そうなれば、消費税の引き上げを契機とした景気の悪化は避けられないことになります。
 
 少子高齢化対策、労働力人口の増加と働く場所の確保、低賃金労働者の可処分所得の増加を図らない限り、デフレからの脱却は容易ではなく、景気も回復しません。このような状況下で行なわれる今回の消費税の引き上げはさらなる景気の悪化を加速することになりかねません。
 
 
 次回は財政の悪化について考えてみたいと思います。
 
 ≪消費税率の引き上げがもたらすもの。 その2 財政の悪化≫
 
 http://www.ksc-kaikei.com/blog/index.cgi 
 
(注1)日本の人口の推移 総務省統計局
http://www.stat.go.jp/data/nihon/zuhyou/n0200100.xls
 
(注2)労働力人口の推移 総務省統計局 
http://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/zuhyou/lt01-01.xls
 
(注3)高齢者数の推移 総務省統計局
http://www.stat.go.jp/data/topics/topi541.htm
 
(注4)完全失業者数(年齢階級別) 総務省統計局
http://www.stat.go.jp/data/roudou/longtime/zuhyou/lt01-12.xls
 
(注5)≪民間給与実態統計調査H22年分 国税庁≫ KSC会計事務所のHP
http://www.ksc-kaikei.com/news/index.cgi?no=135
 
(注6)選択的な消費行動 日本リサーチセンター
http://www.nrc.co.jp/marketing/10-11.html
 
  
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12年07月17日 14時05分09秒
Posted by: mizoe
 札幌市豊平区の 社会保険労務士・税理士 溝江 諭(みぞえさとし) です。
 
 
 先日、当社指定の会計ソフトを利用しているお客様A氏からこんな電話がはいりました。
 
                 037-1.jpg 
 
 A氏「パソコンが動かなくなり、如何ともし難いため、ハードディスクを初期化したのですが、会計ソフトのデータは復元できるでしょうか?」
 
 当社「データのバックアップをフラッシュメモリに取ってありますか?」
 
 A氏「確か数ヶ月前に一度取ったはずです・・・。でも、いつも使っているフラッシュメモリには何も残っていないのですが・・・。」
 
 当社「うーん・・・。」
 
 
 想定外の事態の出現です。バックアップデータが何もないというのです。ましてや、この会社は今月末が決算日。この差し迫った時期に来て、今期のデータを一切喪失したというのですから、当社としても唖然・・・です。
 
 普段から「バックアップデータは定期的に取っておいてください。」とお願いし、ソフト上でもバックアップを促すメッセージが定期的に表示されているにも関わらず、ここしばらくはバックアップを取っていなかったというのです。さらに、取ったはずのフラッシュメモリにそのデータが残っていないというのですから・・・。
 
 最悪の場合には、導入作業(会社の基本情報、科目体系、科目名、消費税情報、口座名、取引先名、摘要名、科目残高、試算表や財務諸表の形式などの登録)をはじめからすべてやり直し、さらに毎月のデータをすべて入れ直し、次いで登録に誤りがないかどうかを確認するため、すべての仕訳と科目残高をチエックする必要に迫られます。そして、これらの作業には膨大な時間を必要とするはずです。
 
 最悪の事態をなんとか避けることができないか。それを検討するためには、まず事実関係をしっかりと掌握する必要があります。そこで、急遽、お客様を訪問しました。
 
 お客様にはハードディスクの初期化に至った事情をお尋ねし、次に、初期化後のハードディスクの各ドライブに何らかの会計データが残されていないかチエックすることにしました。しかし、すべてのドライブを確認しても、それらしきデータの痕跡は一切ありません。
 
 そこで次に、現在保存しているフラッシュメモリを全部持ってくるようにお願いしました。バックアップ用にいつも使用していたフラッシュメモリとは別のフラッシュメモリにバックアップデータが残っていないか確認するためです。
 
 しばらくすると、仕事その他で使用している30本あまりのフラッシュメモリをお菓子箱にいれて持ってきました。
 
 「えっ、そんなにあるのですか?」
 
 思わずそんな問いが私の口から飛び出しました。
 
 その中から1本のフラッシュメモリを任意につまみ上げ、それをパソコンのUSB端子に挿入し、祈るような気持ちで、ディレクトリを開け、中のフォルダー名とファイル名を確認します。
 
 最初のフラッシュメモリの中には、会計ソフトのバックアップデータの存在を示すフォルダー名とファイル名を発見することはできませんでした。
 
 1本目のフラッシュメモリをUSB端子から外し、次に、2本目のフラッシュメモリをUSB端子に挿入し、1本目と同様に、ディレクトリを開けて中のフォルダー名とファイル名を確認します。
 
 しかし、2本目にもバックアップデータの存在を示すフォルダー名とファイル名が見当たりません。新たなフラッシュメモリを次から次へとつまみ上げ、同じ作業を繰り返します。
 
 10本目に至っても、20本目に至っても、30本目に至っても、それらしいフォルダー名とファイル名は見当たりません。
 
 「バックアップデータはやはり残っていないのか?」、徒労感が脳裏をちらりとよぎります。
 
 しかし、それでも、残り少なくなったフラッシュメモリに対し、同じ作業を機械的に繰り返します。
 
 お菓子箱に目を転じると、残されたフラッシュメモリはあと2本のみ。そのうちの手前にある小型のフラッシュメモリをつまみ上げました。
 
 「バックアップデータが残っていますように!」、心の中でそう祈りながら、USB端子に入れ、ディレクトリーを開きます。
 
 すると・・・。
 
 なんと、探していたホルダー名が眼前のディスプレーに表示されているではありませんか。
 
 「Kaikei_BKD」という、会計ソフトのバックアップデータを示すフォルダー名です。
 
 さっそくフォルダー内を覗いて見ると、バックアップの各データファイルが間違いなく残っています。
 
 「あー、良かった!」
 
 次に、残されているデータはいつのものか確認するため、早速、ひとつのファイルのプロパティを開いてみます。
 
 残っていたのは昨年7月のデータでした。つまり、前回の決算月の翌月データが残っていたのです。残念ながら直近のデータではありません。
 
 しかし、何もないところからすべての導入作業をやり直し、すべてのデータを入れ直す方法に比べると、このデータから復元する方法は手間を大きく省いてくれます。昨年7月のデータが残っていただけでも、不幸中の幸いと神に感謝しなければなりません。
 
 その後はそのバックアップデータを使って、昨年の7月のデータをまず復元し、その後、ちょっとした裏技を利用して、無事、直近の会計数値まで復元することができました。
 
 めでたし、目出度し。
 
 それにしても、バックアップデータが残っていて、本当に良かった!
 
 みなさん、大切なデータはハードディスクにだけではなく、フラッシュメモリなどの外部のメモリ媒体にも頻繁にバックアップしましょう。
 
 「備えあれば憂いなし!」、「急がば回れ!」です。
 
 ちょっとした手間を惜しまず、最悪時を想定し、それに備えよ!
 
 昔の人はうまいことを言いますね。
 
 それにしても・・・・。
 
 昨年の3.11の原発事故と事故に至るまでの原発行政と電力政策、事故以後の対処法と損害賠償、汚染地域の再生策、さらには今後の稼働に対する政府と電力会社の思惑を垣間見ると、残念ながら、これらの含蓄に富む格言が原子力発電においてはほとんど生かされていないのでは?と感じるのは私だけでしょうか。 
 
 
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http://www.ksc-kaikei.com/ 
 
 
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=================================================================  ◎ 中小会計要領と法人税法との異同。 
 
 経過勘定のうち、短期前払費用
について、判例を参考にしながら解説します。

 
 ≪中小会計要領の主な内容 その6 経過勘定 2、短期前払費用1≫  
 
 http://www.ksc-kaikei.com/news/index.cgi?no=162 
 
=================================================================  ◎ 法人税の税務調査って、当たる確率はどの程度なのかな?
  
≪税務調査に当たる確率はどのくらい? ≫  
 
 http://www.ksc-kaikei.com/blog/index.cgi?no=110
   
=================================================================  ◎ 納税者の権利救済の実態はどのようになっているのかな?
  
≪納税者の勝率は?納税者の権利救済の実態は?≫ 
 
 http://www.ksc-kaikei.com/blog/index.cgi?no=109
 
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12年07月06日 07時59分09秒
Posted by: mizoe
 札幌市豊平区の 社会保険労務士・税理士 溝江 諭(みぞえさとし) です。
 
 
 社会保険の算定基礎届の時期となりました。
 
 社会保険の標準報酬月額を年に一度定期的に決定する「定時決定」。そのために作成し、提出するものが算定基礎届です。
 
 今年(平成24年)の提出期限は7月10日です。
 
 
               j02895255-2.jpg
 
 作成の対象者は本年7月1日現在の被保険者で本年5月31日以前に資格取得した方です。
 
  
1 『算定基礎届の作成提出を自社で行うお客様』
 
 次の書類を作成し、所轄の年金事務所へ提出します。
 
①算定基礎届・・・4,5,6月に支給した給与の総支給額を基に作成します。
 
(注意点)
 
   1 所得税では非課税とされる通勤手当等も含めます。
   2 食事・住宅・定期券などの現物給与も含めます。
   3 支払基礎日数が17日以上の月の給与を記入します。短時間就労者ですべての月の支払基礎日数が17日未満の場合は、15日以上の月の給与を記入します。
   4 標準報酬月額の下限と上限は健康保険と厚生年金では異なります。
 
          健康保険  厚生年金
       下限  58,000   98,000
       上限 1,210,000  620,000

②算定基礎届総括表
 
③算定基礎届総括表附表
 
 
2 『算定基礎届の作成提出をKSCへ依頼するお客様』
 
 次の書類をKSC宛に7月4日までにファックス願います。
 
①算定基礎届チェック表
 
1 所得税では非課税とされる通勤手当等も支給額に含めます。
2 支払基礎日数が17日以上の月の給与を記入します。短時間就労者ですべての月の支払基礎日数が17日未満の場合は、15日以上の月の給与を記入するとともに、パートと表示してください。
3 過去1年間に昇給、降給があった場合には、「昇給、降給月」「変更前の固定給」「変更後の固定給」もご記入ください。
 
 なお、7月月変に該当する方がいる場合には別に「月額変更届」を提出する必要があります。
 
 
【新標準報酬月額の使用開始時期】
 
 各人の給料から控除する保険料は前月分の保険料となります。このため、新しい標準報酬月額は本年の10月支給分の給料計算から使用することになります。
 
【平成24年3月分からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表】・・・北海道用
 
 http://www.kyoukaikenpo.or.jp/resources/content/91737/01.pdf  
 
  
 各地の保険料額表は以下のサイトを御覧下さい。
 
 http://www.kyoukaikenpo.or.jp/8,0,120,713.html
 

  
=================================================================  ◎ 社会保険料はいつから変更に? 間違っていませんか? 
 
  『社会保険料の変更、いつから?』 その1 定時決定の場合
 
http://www.ksc-kaikei.com/blog/index.cgi?no=36
 
=================================================================  ◎「お知らせ」のご案内
 
  労働保険(雇用保険と労災保険)の年度更新の時期です。  
 
≪ 労働保険 『年度更新』のお知らせ ≫平成24年度 
 
http://www.ksc-kaikei.com/news/index.cgi?no=164
 
=================================================================    源泉所得税、「納期の特例」の納付期限が近づいています。  
 
≪源泉所得税の「納期の特例」、納付期限は7月10日≫
 
 
http://www.ksc-kaikei.com/news/index.cgi?no=168
 
 
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12年07月02日 09時34分23秒
Posted by: mizoe
 札幌市豊平区の 社会保険労務士・税理士 溝江 諭(みぞえさとし) です。
 
 
 中小会計要領の各論のうち主なものについて、法人税法との異同を意識しながら見て行きましょう。
 
              589-2.jpg 
 
 今回は最終回で、 引当金 です。
 
 
(1) 以下に該当するものを引当金として、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として計上し、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載する。・将来の特定の費用又は損失であること・発生が当期以前の事象に起因すること・発生の可能性が高いこと・金額を合理的に見積ることができること 
 
(2) 賞与引当金については、翌期に従業員に対して支給する賞与の見積額のうち、当期の負担に属する部分の金額を計上する。 
 
(3) 退職給付引当金については、退職金規程や退職金等の支払いに関する合意があり、退職一時金制度を採用している場合において、当期末における退職給付に係る自己都合要支給額を基に計上する。 
 
(4) 中小企業退職金共済、特定退職金共済、確定拠出年金等、将来の退職給付について拠出以後に追加的な負担が生じない制度を採用している場合においては、毎期の掛金を費用処理する。
 
 
【解説】
 
 引当金は、未払金等の確定した債務ではないものの、(1)の4つの要件を満たす場合には、財政状態を適正に表示するために、負債の計上(又は、資産からの控除)が必要であると考えられ、合理的に見積って計上することとなります。
 
 具体的には貸倒引当金(前掲「4.貸倒損失、貸倒引当金」参照)、賞与引当金、退職給付引当金、返品調整引当金等の引当金があります。
 
 なお、金額的に重要性が乏しいものについては、計上する必要はありません。
 
<賞与引当金>
 
 賞与引当金については、翌期に従業員に対して支給する賞与の支給額を見積り、当期の負担と考えられる金額を引当金として費用計上します。具体的には、決算日後に支払われる賞与の金額を見積り、当期に属する分を月割りで計算して計上する方法が考えられます。
 
<退職給付引当金>
 
 従業員との間に退職金規程や退職金等の支払いに関する合意がある場合、企業は従業員に対して退職金に係る債務を負っているため、当期の負担と考えられる金額を退職給付引当金として計上します。
 
 (3)にあるように、「退職一時金制度」を採用している場合には、決算日時点で、従業員全員が自己都合によって退職した場合に必要となる退職金の総額を基礎として、例えば、その一定割合を退職給付引当金として計上する方法が考えられます。
 
 また、(4)にあるように、外部の機関に掛金を拠出し、将来に追加的な退職給付に係る負担が見込まれない制度を採用している場合には、毎期の掛金を費用として処理し、退職給付引当金は計上されません。
 
(以上、中小会計要領)
 
 
 引当金の意義については中小会計要領にある通りです。また、範囲については「貸倒引当金、賞与引当金、退職給付引当金、返品調整引当金等」とされていますので、この4種類の他にも引当金の意義に該当するものがあれば、それは引当金として計上すべきものとなります。これには、例えば製品保証等引当金、売上割戻引当金、修繕引当金、損害補償損失引当金、役員退職慰労引当金などが考えられます。
 
 以上に対し、法人税法では原則として引当金の計上を認めていません。法人税法第22条第3項において、償却費以外の費用で期末までに債務の確定しないものは当期の損金の額に算入できないと定められているためです。
 
 では、引当金の計上を一切認めていないのかというとそうではなく、別段の定めにおいて、貸倒引当金と返品調整引当金の2種類だけは認めています(法52、法53)。この場合の損金算入額は、損金経理した繰入額のうち損金算入限度額に達するまでの金額となります。
 
 なお、貸倒引当金については、平成23年12月の税制改正において、適用法人が次の法人に限定されています(法55)。
(1) 中小法人等
(2) 銀行、保険会社その他これらに準ずる法人
(3) 売買があったものとされるリース資産の対価の額に係る金銭債権を有する法人等(上記(1)又は(2)に該当する法人を除く。)
  
 また、貸倒引当金が縮減される法人については、経過措置が設けられました(税制構築法附13)。平成24年4月1日から平成25年3月31日までの間に開始する事業年度については改正前の規定による繰入限度額の4分の3、平成25年4月1日から平成26年3月31日までの間に開始する事業年度については改正前の規定による繰入限度額の4分の2、平成26年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する事業年度については改正前の規定による繰入限度額の4分の1までの繰入れができる等の経過措置です。
  
 法人税法でも認めている上記2種類の引当金については、企業会計においても法人税法の繰入限度額を計上することにより、中小会計要領との整合性を保つことができますが、法人がこれ以外の引当金を計上した場合には、その繰入額はすべて損金不算入となるとともに、その戻入額はすべて益金不算入となるので、別表4で加算、減算する必要があります。
  
 法人税法では、上記2種類の引当金以外にも、過去においては、賞与引当金、退職給付引当金、製品保証等引当金、特別修繕引当金の各引当金については企業会計との整合上その計上を認めていました。しかし、1998年度以後の税制改正における法人税率の引下げに伴う税収の減少を抑制するために、課税ベースの拡大策としてこれらの引当金の縮減、廃止を行なって来ました。
  
 このような引当金の縮減、廃止は、本来損金算入すべきものが損金として認められていないことを意味し、これには疑問を感じます。法人税法においても引当金の意義に該当するものは引当金として認めるべきだと思いますが、みなさんはどう考えますか。
 
 引当金については以上です。
 
 中小会計要領には、これまでにお伝えしたもの以外にも、繰延資産、リース取引、外貨建取引、純資産、注記などについて定められています。これらについては今回触れませんでしたが、ぜひ本文をご覧下さい。
 
 以上で、中小会計要領の主な内容についての連載を終わります。これまでお読みいただいた皆様、有難うございます。
 
 なお、この連載の最初の記事は以下で見ることができます。

  
 ≪中小会計要領の主な内容 その1 実現主義と発生主義≫
 
  http://www.ksc-kaikei.com/news/index.cgi?no=155
 
  
 その他の『ちょっとためになる情報』は、次のサイトの「お知らせ」と「ブログ・コラム」でどうぞ!!
 
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※ 日本税理士会連合会では、中小企業の計算書類について、「中小企業の会計に関する基本要領」の適用状況を確認するための書類として、「中小企業の会計に関する基本要領の適用に関するチェックリスト」を作成しました。
 
 http://www.nichizeiren.or.jp/taxaccount/pdf/youryouchecklist120327.pdf
 
 
==================================================================
◎ 節税対策として使われる「短期前払費用」

中小会計要領との関連ではではどのように理解すると良いのでしょうか?

   
 ≪中小会計要領の主な内容 その5 経過勘定 1 、特に短期前払費用≫
 
 http://www.ksc-kaikei.com/news/index.cgi?no=161 
 
==================================================================
◎ 法人税の税務調査って、当たる確率はどの程度なのかな?
  
  ≪税務調査に当たる確率はどのくらい? ≫
 
 http://www.ksc-kaikei.com/blog/index.cgi?no=110  
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