長崎市長選は、まだ終わっていない。

 田上新市長が当選した翌日の4月23日から、「選挙は無効だ、やり直せ」などの嫌がらせ電話が相次いでいるという。そのため、市長の公式行事には私服警官を付けたり、市長の自宅周辺の警備強化を余儀なくされている。

 確かに、田上氏と横尾氏の得票数は953票の僅差であって、しかも、前市長の「伊藤一長」と書かれたものなどの無効票が1万票を超えるという混乱ぶりからすれば、いわば「世襲派」の気持ちも分からないではない。

 しかし、横尾氏が当選できなかったのは、自分が無効票を投じたからではないのか。

 私は、政治家の世襲制には前から疑問を持っていた。親が政治家としての資質や能力を有していたとしても、その子供に同様の資質や能力が備わっているとは限らないからだ。

 勿論、子供に政治家としての資質や能力が備わっているのであれば、親の「地盤」「看板」「カバン」を利用して、当選することに異議を唱えるものではない。

 長崎市民は、実質3日という選挙戦により、横尾氏の政治家としての資質や能力を判断することができなかったため、課長職にあった田上氏を選ばざるを得なかったのであろう。

 それにしても、自分の思った人が当選しなかったからといって、脅迫まがいのことをするべきではない。言葉の暴力は、時として有形力を伴った暴力よりも恐怖心を与えることがある。

 わが国の民主主義のバロメーターを見た思いであった。

 今回はこの辺で。