事案は、「補助参加人らは、Yに対し、Xを被申立人として不当労働行為救済の申立をしたところ、Yは、Xが不誠実な団体交渉等によって補助参加人分会の組合員に対する夏季一時金の支給を遅滞させたこと等を認定し、これを不当労働行為に該当すると判断し、救済命令を発した。その中で、誓約書という題の下に、「当社団が行った次の行為は、神奈川県地方労働委員会により不当労働行為と認定されました。当社団は、ここに深く反省するとともに今後、再びかかる行為を繰り返さないことを誓約します。・・・・・・・・」との文言を縦1メートル、横2メートルの白色木板に墨書し、これをX経営の病院の建物入口附近に掲示するよう命ずる(ポスト・ノーティス命令)という内容があった。Xは、本件ポスト・ノーティス命令は謝罪広告を命ずるものであり、原状回復という不当労働行為の救済の目的に反し、当事者以外の第三者にその内容を公表し、かつXの意思の反してその掲示を強要するもので、救済内容として不要かつ行き過ぎたものであるとして、救済命令の取消を求めたもの」である。

 これは、医療法人社団・亮正会事件であるが、最高裁(最判H2、3,6)は次のように判示した。

 本件ポスト・ノーティス命令が、労働委員会によってXの行為が不当労働行為と認定されたことを関係者に周知徹底させ、同種行為の再発を抑制しようとする趣旨のものであることは明らかである。右掲示文には「深く反省する」、「誓約します」などの文言が用いられているが、同種行為を繰り返さない旨の約束文言を強調する意味を有するにすぎないものであり、Xに対し反省等の意思表明を要求することは、右命令の本旨とするところではないと解される。してみると、右命令はXに対し反省等の意思表明を強制するものであるとの見解を前提とする憲法19条違反の主張は、その前提を欠くというべきである。また、本件ポスト・ノーティス命令が、Yに認められた裁量権の範囲を逸脱したものともいえない。

 この判決は、最高裁が初めて、ポスト・ノーティス命令は思想及び良心の自由を保障した憲法19条に違反しないと判示したものです。

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