秋北バス事件(最高裁S43.12.25)

 労働契約法第7条参考判例 (就業規則と労働契約との法的関係) 

■概要  
 就業規則の変更により、定年制度を改正して主任以上の職の者の定年を55歳に定めた(一般従業員については50歳)ため、それまで定年制の適用のなかった労働者が定年制度の対象となり、解雇通知を受けた事例で、新たな就業規則の作成・変更によって、既得権利を奪い労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは原則として許されないが、  
 当該規則条項が合理的なものである限り、個々の労働者においてこれに 同意しないことを理由としてその適用を拒否することは許されないと解すべきとし、不利益を受ける労働者に対しても、変更後の就業規則の適用を認めた。 

★ポイント(不合理、信義則違反、権利濫用と認められない。) 

1.定年制は、人事の刷新・経営の改善等、企業の組織及び運営の適正化のために行われるものであって、一般的にいって、不合理な制度ということはできない。 

2.新たに設けられた55歳という定年は、産業界の実情に照らし、かつ、一般従業員の定年が50歳との比較権衡からいっても、低きに失するともいえない。

 3.必ずしも十分とはいえないにしても、再雇用の特則が設けられ、同条項を一律に適用することによって生ずる過酷な結果を緩和する道が開かれている。 

☆判決 

 「多数の労働者を使用する近代企業においては、労働条件は、経営上の要請に基づき、統一的かつ画一的に決定され、労働者は、経営主体が定める契約内容の定型に従って、附従的に契約を締結せざるを得ない立場に立たされるのが実情であり、この労働条件を定型的に定めた就業規則は、一種の社会的規範としての性質を有するだけでなく、それが合理的な労働条件を定めているものであるかぎり、経営主体と労働者との間の労働条件は、その就業規則によるという事実たる慣習が成立しているものとして、その法的規範性が認められるに至っている。」 

 「新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されないが、
  労働条件の集合的処理、特にその統一的かつ画一的な決定を建前とする就業規則の性質からいって、当該規則条項が合理的なものである限り、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒否することは許されない。」

東社会保険労務士事務所