2014年 3月の記事一覧
■判決
会社には、必ずしも労働者からの申告がなくとも業務を軽減する等の安全配慮義務があり、
東京高裁の過失相殺による安全配慮義務違反による損害賠償の2割減額を違法とし、
差し戻した。
■事件概要
長時間労働等でうつ病に罹患し、3年の休職期間満了後、解雇されたが、
解雇無効を主張し、労働契約上の地位確認と未払い賃金の支払い、
安全配慮義務違反による慰謝料の支払いを求めた。
・平成21年5月18日東京地裁
→うつ病は業務上が原因とし、解雇無効、賃金と安全配慮義務違反等に
よる慰謝料計約2800万円の支払いを命じた。
△労働基準法第19条第1項において、
「使用者は労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間
及びその後30日間は解雇してはならない」とされているからである。
・平成23年2月23日(東京高裁)
→神経科の医院への通院、病名等の情報を上司や産業医等に申告しなかったことは
鬱病の発症を回避したり発症後の増悪を防止する措置を執る機会を失わせる一因となったものであるから、
損害賠償請求については過失相殺をするのが相当であるとし2割減額。
・平成26年3月24日(最高裁)
→労働者にとって、プライバシーに属する情報であり,人事考課等に影響し得る事柄と
して通常は職場において知られることなく就労を継続しようとすることが想定される性質の情報であった。
使用者は,必ずしも労働者からの申告がなくても,その健康に関わる労働環境等に十分な注意を払うべき
安全配慮義務を負っているところ、必要に応じてその業務を軽減するなど労働者の
心身の健康への配慮に努める必要があるものというべきである。
会社に申告しなかったことをもって,民法418条又は722条2項の規定による過失相殺
をすることはできないというべきである。
(債務不履行の責任等、過失相殺)
△民法418条
「債務の不履行に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、
損害賠償の責任及びその額を定める。」
(不法行為、損害賠償の方法及び過失相殺)
△民法722条2項
「被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、
損害賠償の額を定めることができる。」
休職制度の利用中や職場復帰後に退職しているとの調査結果を労働政策研究機構がまとめた。
(2012年11月に調査実施、5904社が回答)
休職できる期間が短く治療が十分でないことや、
復職後の支援体制が不十分なことが退職の背景にあるとみられる。
ただし、中小企業では、休職期間中も発生する社会保険料の負担が重いため、
数年前から、休職期間は短くする傾向にある。
メンタルヘルス対応労務管理対策室